8.ヒーロー出でよ

 涼風に乗ってことしも高校選手権の足音が高鳴ってきた。 新人戦・関東大会・インターハイと、公式戦の四分の三を消化し、残るはメーンの選手権のみとなった。トーナメーント形式は指導者にとっても選手たちにとっても、気の休まらない連続であろう。
一つのミスが生命とりになる場合が起こり得る。ミスのないように日頃の練習を重ねてきた筈なのに、そこが生身の(ナマみ)の人間―思わぬアクシデントが起きてしまうものだ。逆に一つの好プレーが勝利をもたらし、チームにはずみがついて、すいすいと勝ち進む例も少なくない。
 全国優勝を成しとげた清水東高校監督の勝澤要先生(現・掛川西校長)は著書の中で「ヒーローはいいがスターは要らない」と書いておられる。桐光イレブンの中からヒーローの出現を望むこと切である。ヒーローは唐突に生まれるものでなく、着実な訓練の積み重ねによる。そして更に大事なことは、個人が浮き上がるものではなく、チームプレーの結集の上に成り立つことを、心してもらいたい。桐光サッカーは「華麗」さに定評がある。これ故に私はファンになった。もし言わせてもらえば、華麗さに「丈々しさ」が加われば鬼に金棒ではあるまいか。国立競技場進出は遠い夢ではないのだ。近頃クラブチーム重視の声が時折り聞かれる。だが、社会や教育のシステムが欧州などと異なる日本にあって、七十八回もの伝統を誇る高校選手権は、十代サッカーの「華」であることに依然変わりはない。国立競技場に集まる五万六万のファンがこのことを証明する。クラブチームと高校チームがお互いに長所を伸ばしつつ競い合い、日本サッカーのレベル向上に貢献してもらいたい。

−コスモスに囁かれえし野の仏−

連載コラム No.8より



←前

次→