3.ふさわしいサッカー道場を

 昨年の11月、日本エッセイスト・クラブの月例会で、NHK解説委員の西田善夫氏の話を聞く機会を得た。 その中でJリーグが採用しているVゴール方式に話が及んだ。 日本人の体質に合わない「引分け」方式だが、 これが世界サッカーの本流であると氏は語り、引分けの値打ちを強調された。 その上で「もしJリーグのVゴール方式が日本に有利に働くとすれば,アジア最終予選だろう」と付け加えた。 結果は西田氏の言ったとおりで、対イラン戦延長戦で,沈滞ムードの日本列島に明かりがともった。
 その西田氏からいただいた年賀状に次の一節が目にはいった。 「甲子園の内野に天然芝が生え、Jリーグに引分け制度が出来る・・・・・。これが私の夢です」と。 幸い桐光学園サッカー部は、関東十二校と共に「スーパーリーグ」を結成した。 芝のグランドで延長戦なしのゲームが二年目を迎える。 試合は芝のグランドだが、桐光サッカー部の日常の道場はおせじにも好環境とは言い難い。 狭いこともさることながら、少量の雨でもグランドがぐしゃぐしゃになる。特に今年は、一月十五日に記録的な大雪が降り、 グランドはかなり長期に亘り、さながら「田んぼ」の如き様相を呈した。 練習着は泥んこ、顔や頭も泥まみれ。選手が誰なのか見当さえつかないほどだった。 悪戦苦闘の練習であったが、神奈川新人戦で最終ベスト4入りしたのは立派である。 すでに全国準優勝を飾り、これからも全国制覇をめざすチームのホームグランドにしては、あまりに不似合いである。 至れり尽くせりの新体育館に比べても、落差が大き過ぎるように思う。 縁あって一ファンになったに過ぎぬ私だが、躍進桐光にふさわしいサッカー道場の出現を、外野席から切に望んでいる。

(一九九八・二・二五) 連載コラム No.3より




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