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マイカーなどまだ珍しいかれこれ四十年近く前、私は自動車教習所に通っていた。 今ではノークラッチ車の免許があるが、当時はギアの入れ替えが億劫だった。 ましてや狭い教習所、トップに入れてもすぐセカンドに落とさねばならぬ。 私はついセカンドのままで走行したがる。教習所の教師は横着を見逃さない。 「トップに入れろ。ブレーキを使え」こんなお叱りを何回受けたことか。 車はアクセルで走るもの、と思い込んでいた私の脳裏に、或る日ひらめいたことがある。 「ブレーキこそ運転の要ではないか!」その証拠に、路上練習の際の教師の命綱は助手席のブレーキ一つではないか。 サッカーの話に移そう。私の若い頃は「蹴球」と称した。文字通り球を蹴る競技である。 この頃サッカーを観て特に思うことは、巧い選手・強いチームほどTRAP技術が優れているということだ。 逆にTRAP技術がへただと、せっかくの得点チャンスをみすみす取り逃がす場面が多い。 昨年の夏、ふるさと韮崎で桐光学園高等学校チームにひとめ惚れした原因の一つに、TRAPの見事さがあった。 親しくしているサッカーの指導者は「子どもの時に体得しておかないと手遅れ」と言う。 しかし「人生は遅過ぎることはあり得ない」との教訓もある。高校生だって十分上達できるはずである。 桐光の篠田先生に伺った時「ボールは壁に当てるとはね返ってしまうが、じゅうたんだと下に落ちる」とおっしゃた。 素人の私にも、何となく要領の伝わるたとえである。どうやら車のブレーキに似ている。 サッカーは蹴ることもさることながら、すべてはTRAPから始るものではないだろうか。
(日本がUAEと引き分けた夜) 連載コラム No.2より
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