12.発想の転換

 かって私の職場に「俺はスランプだ」と常にぼやいている青年がいた。ある時先輩が「スランプってな、いつも好調に成果をあげている者が、たまたま行き詰まって落ち込むとき使うことばだよ」とたしなめた。それはさておき、サッカー選手もスランプというものに悩まされることはしばしば起こる。
 以前私の電話番号が(415〜1308)のとき、友人が愛称をつけてくれた。一つめは「よい子瞳はパッチリ」二つめは「良い子意味ないわ」である。語呂合わせの得意な人であった。愛車のナンバーに(12〜24)が来た時、なんて命名しようかと何日も考えたが名案が浮かばない。そんなある日、慶大サッカー部で活躍している原田清くんが遊びにきた。彼は清水東高校時代から全国区のスターであった。私は彼の知恵を借りることにした。原田くんは即座に、いとも簡単に「クリスマス・イブ」と答えた。
  あまりの名答に語呂合わせだけで迷路をさまよっていた自分は、一本参った形であった。この時に私は「発想の転換」を学んだ。発想の転換には、平素から、豊かな想像力や思考の柔軟性を培っておくことが大切ではあるまいか。
 サッカーでも、スランプに行き詰まったときや、戦術がワンパターンで進歩が見られないときなどは、思い切った発想の転換を試みるがよい。
 「鱗がおちる」と言う通り、意外な活路が開けるものである。
 竹の節にたとえて私の指導経験をつけ加えよう。節に行き詰まって伸び悩む生徒が、いったん節を突破すれば、この位置に留まってはいない。多くの場合、次の節まで一気に駆け上がってゆく。スランプを脱却した後に、思わぬ成長の可能性を秘めている。

−秋高し百万石の城下町−

連載コラム No.12より



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